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地球・絵手紙ネットグループ 木下 誠

<第1話 21世紀に希望を>

 21世紀の年始、おめでとうございます。皆様のご健康とご多幸を心からお祈りいたします。
 新しい世紀の始まりの年。未来のためにも「平和」と「健康」を何よりも祈念いたします。

 私は日本の未来に悲観的な気持がありましたが、昨年のシドニー・オリンピックでのわが女子選手の活躍ぶりを見て考えを改めました。絵手紙の会を眺めても、女性の元気と自信の姿に希望を持つ事ができました。女性は絶対に戦争を認めません。平和を守るために大きな行動ができなくても、自分の身の回りから動くことが出来ます。人々の和を築き仲良しを広げることです。10人10色。お互いの相違を認め合う心。受容の精神で人間関係を。絵手紙と共通する心の持ち方です。
 21世紀、地球環境も心配の種です。人間も環境の一部です。環境が破壊されたら、健康という大事なことも危なくなります。絵手紙を描く人は、草木、野菜、魚と総てのものに関心が強いと思います。心のそして体の健康のためにも、できるところから自然環境を守る運動に取り組みましょう。

<第2話 絵手紙の良いところを発見するポイントT>

 絵手紙展が数多く開催されています。それぞれの会場で趣向を凝らした展示がされ、一般の人たちも来場して大変盛会です。その会場で絵手紙を見て、いろいろと感想を話し合っているのを聞きながら思いました。「この絵手紙いいわね」「とても素晴らしいわね」などという感想はたくさん耳に入りましたが、どこがどう良いのか具体的な話は少ないようでした。
 ところで人間関係においても、感情的に好かない人がいても、付き合っているうちに、その人の良いところが必ずあると気づくことがあります。絵手紙の良さを発見することと、人の良さを発見することの基本は全く同じと思っています。『どんな絵手紙にも必ずよい個所がある』それが私の確信です。
 どう具体的に良さをみつけるか?先ず、その絵手紙の気持が表現されている雰囲気を感じて思います。優しさが出ている。暖かさを感じる。繊細さがある。風景の臨場感が出ている。伸び伸びとした自由さがある。構図がいい。よく観察して描いている。独創的だ。素直さが表現されている。迫力がある。個性的であなたの体温が感じられる。等々、誉める言葉はもっとたくさんあるのではないでしょうか。

<第3話 絵手紙の良いところを発見するポイントU>

 絵手紙は絵が上手いとかヘタとかという尺度ではなく、相手に伝えたいその人の気持がどれだけ表現されているか、手紙としてのよさを見出したいものです。気持(心)は一枚の絵手紙のどこに現れてくるのか。全体的な雰囲気については前回書きました。細部ではどうでしょうか?私は三つの分野で見させ、読ませてもらっています。
 まず最初に、絵の下書きの線。線はいろいろな筆記用具で描かれます。その線に気持が出ているかいないか。「質感を感じさせられる線」「力強い線」「優しい気持ちの感じられる線」等々
 次に、絵の彩色。「淡い色付けから感じられるやさしさ」「明暗から受ける、描かれるものの質感」等、また彩色に現れる喜怒哀楽の気持。
 そして最後が、文章の力。私自身、絵を描いてその絵が不満足な時は、文章で気持を十分伝えようと懸命に考えて書くように努めています。そこが手紙のよさだと思うからです。絵手紙展で絵手紙を拝見する時、必ず文章を読んで、素直な気持を書かれたものに出会うと嬉しくなったり、感動したりします。

<第4話 テーマを決めて描く絵手紙T>

 絵手紙は一枚の「はがき」に描くのが基本ですが、一枚だけで完結しなくても、連続して二枚目、三枚目・・・と描いてもいいのではないでしょうか。私が最初にテーマとして描き続けたのは「ランプ・シリーズ」です。あちこちに出かけた折りに目にした、いろいろな形をしたランプ。喫茶店・レストラン・旅の宿。そして湖畔や公園に立つ街燈。その時の思いが込められたランプの絵手紙を20枚描いてMさんに送りました。
 その後「のれん・シリーズ」も描きました。銀座の絵手紙展に展示した「母の絹の道」も、松本−八王子−横浜という地理的な経路を頭に入れた風景と蚕から絹糸へのテーマ絵手紙の一部でした。このようにどんな「もの」でもどんな「こと」でもテーマとして決めることができます。この「テーマ」を考えることもまた絵手紙を描く楽しみの一つです。
 日常、身近なものを描きながら、テーマ絵手紙を描き続けるためには、継続とか連続とか、決めたら描き続けるという気持が大事です。ちょっと億劫になっても描くことです。目標を達成して、全部の絵手紙を並べて眺めた時の感慨は、人生の中で何かを達成したという充実感が湧いてきます。物語がある。絵巻き物のようだ。叙情詩でもある。そんな気がします。一枚一枚の絵手紙を連続して、巻き紙や七枚綴りのはがきに描き直すのもいいものです。テーマ絵手紙を送る先方(キャッチャー)は、気心が知れた人がよいですね。呼吸が合うということが強みですから。

<第5話 テーマを決めて描く絵手紙U>

 1.テーマを決める時はあまり欲張ったり、芸術的な意欲を持つよりも、日常的な思いつき、ちょっとした発想で決めると長続きします。平凡なものでよいと思います。
 2.一日で描いてしまうのでなく、一ヶ月あるいは一年という時間をかけて、コツコツと描きためてゆく方法に意味があるような気がします。
 3.その時々で、描く相手も異なり、描く自分の気持も変わるものです。その時に、全部同じ筆記用具で描くよりも、今日は鉛筆、この日はダーマートで、またある日はサインペンでと変えて描くのも、よい記録や思い出となります。

<第6話 絵手紙を歴史から学ぶT>

 絵手紙は「手紙」です。手紙はどういうものですか?絵手紙は「新しい手紙文化」と言いますが、日本の伝統的な手紙文化との関係はあるのでしょうか?絵手紙を自分の趣味とする人は、このような質問が出た時、何と答えるのでしょうか。
 私は新しいことを始めるのは大好きです。でも新しいことは古いことがあるからこそ始まるのではないかと思います。「手紙」という言葉は、江戸時代初期に使われるようになったと言われています。一つの説は、「手簡」(手ずから書いた状)シュカンがテカンとなり、テカンが手紙となった説。また或る説は、「書することを手とも言われて何となく、書(テ)をかきたる紙という意味」が、「書(テ)紙」つまり『手(筆跡)を書く紙』と言われるようになったと歴史の本に述べられています。

<第7話 絵手紙を歴史から学ぶU>

 平安時代には、手紙のことを「せうそこ」・「ふみ」・「書状」などと呼んでいました。この中で一番興味を引くのは「せうそこ」という言葉です。「せうそこ」は漢字で書くと「消息」です。消息という言葉を辞書で引いてみたことはありますか?現代では狭い意味に使われていますが、もともとは、『相手の安否を問い、用事を達して、心の中の心配事を消し息(や)む』意味であったといいます。
 平安時代の人々は、「手紙」というものを相手に対する思いやり、そして自分の心の癒し、という人間の心に深く触れる存在として扱っていたことが理解できます。絵手紙の世界も、単に楽しければ良いという軽薄な世界でなく、もっと奥深い意味が見出せるのでは?などと考えています。

<第8話 もらって嬉しい絵手紙>

 先頃「思い出のやまなし・旅の絵手紙」コンクールの審査会が開催され甲府に出かけました。審査委員長は画家のYさん。その他後援団体のJRの方、市川大門町、中富町、甲府中央郵便局長、主催の県庁観光課長と私の9名で行いました。
 私以外は絵手紙の門外漢の皆さんでした。どのような方法で審査を行うかと、内心興味津々でした。ところが審査委員長の最初の一言で、私の考えを言う必要のないことを悟りました。「私は絵手紙について素人ですが油絵などの審査をする考えはありません。私がもらって嬉しい絵手紙を選ぶという考えはどうでしょうか?専門の木下先生の考えも参考にしながら・・・」
 私は絵手紙審査の基準など理屈を言うのは野暮だと思いました。「Yさんの言う、もらって嬉しい絵手紙を思い思いに選びましょう」と同意しました。とても明るく和気あいあいの雰囲気と語らいの中で選考が終わりました。
 甲府からの帰りの電車の中で考えました。「もらって嬉しい」気持の中味について整理してみたかったからです。”嬉しい!”その絵手紙から伝わってくる感動が私に与える良さ。ほのぼのとしたぬくもり。私の住む処に対する共感。上手くないけれど味がある。一生懸命描いた心が出ている。絵手紙を描く当事者でない第三者が絵手紙に感じる思いをこれほど頂いたことはありませんでした。本当にありがたいことです。

<最終話 初めての出会い>

 このところ偶然なのか必然なのか、いろいろな紙と出会うことが起こりました。平塚市が熱心に取り組んでいる「ケナフ・フェア」に協賛して絵手紙体験コーナーを実演している時、たまたま私を尋ねて来た人がいました。その人が「藁(わら)紙」を作っている人でした。宮古島へ絵手紙交流で出かけた時、月桃という植物を初めて知りました。月桃は利用価値の多いとのこと、その一つに紙が作られています。「月桃紙」との出会いでした。
 また私が水上勉の「折々の散歩道」の本に出てくる「竹紙」の話をした時に、相手の人が探してくれたのが「竹紙」と「熊笹紙」との出会いでした。続いて絵手紙のお仲間さんから「日本人の指導によって作られた”ネパールの和紙”です」と頂いた紙にも出会いました。
 さて、初めての紙を使って絵を描く時、筆記用具は何を使うか考えてしまいます。私の場合、時には勘で選ぶこともしますが、勘は当たる時と外れる時があります。やはり、いろいろな筆記用具で試してみることです。そして失敗だと思っても捨てないことです。それはそれで面白い効果がある絵ともなります。

地球・絵手紙絵ネット協会会報 「絵てがみの心」より抜粋(無断転載を禁じます)

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