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地球・絵手紙ネットグループ 木下 誠

<第1話 楽しむ・学ぶ・役立つ絵手紙を>

 2003年の新しい年、皆様のご健康とご多幸をお祈りいたします。
 私たちの趣味「絵手紙」を支えている郵政事業も今年は、国営の「日本郵政公社」に生まれ変わります。「日本郵政公社」が私たちの日常生活に不可欠なサービスをより多角的に提供してくれることを期待し応援したいと思います。
 時代の変化に即応しない企業や組織は、またたく間に衰退するものです。「地球・絵手紙ネット協会」は、時代の変化を見落とさないよう、皆様とともに発展していく組織でありたいと祈願しています。そのための3つの柱が「楽しむ」「学ぶ」「役立つ」です。

 「楽しむ」
 絵手紙は、日常生活の中で気楽に楽しむもの。悩んだり苦しんで描くものではありません。ちょっと時間を作って楽しく描いたり、気の知れた仲間とスケッチ会で楽しく描くなど、楽しく描くことが自分の癒しとなり、心の豊かさが増していくものです。ネット協会では「楽しむ企画」を創り出していきます。

 「学ぶ」
 絵手紙はまだまだ歴史の浅い趣味です。これが「本当の絵手紙だ」という歴史的な評価はありません。流行れば流行るほど、一番安易な次元で定着しては残念です。また一方、絵手紙が上手くなり「飾り物」を描き、手紙という本質を忘れてしなうのも困りものです。もっともっと「絵手紙」を研究すること、「私以外は皆、私の先生」という気持ちで学び合うことです。ネット協会では「学ぶ」機会を提供します。

 「役立つ」
 心と心を結ぶコミュニケーションが絵手紙。人間関係に役立つ趣味です。悲しいとき苦しいときの私を立ち直らせる力もあります。また、他人に社会に役立つ趣味です。ネット協会では「役立つ」活動もしていきます。

<第2話 描いてみましょう人物を>

 「絵手紙に人物を描くのは難しい」と思っている人が多いようです。実は、私自身が「難しい」と思っていましたので、今までは『人物の描き方』というテーマを避けてきました。でも最近になって、ヘタでもかまわないから、恥をさらけだしてでも、人物を描いてみようという気持ちになりました。
 絵手紙は他の絵画と異なり、身近なものを何でも手軽に描く特色を持っています。野菜・果物・食器類そして草花等など、いろいろなものを描いてきました。また最近は、スケッチ会や旅先での風景を描く人も増えてきました。そして、フッと気づいたら身近なものに『人間』がいました。絵手紙の中に描いてみましょう人物を!
 次回は私流の「人物を描くコツ」について書いてみたいと思います。

<第3話 誰でも描ける人物のコツ>

 「私だって描いてみるぞ!」と、まず決心して始めてみることです。そして短時間(5〜10分)で描くよう心がけましょう。モデルでない限り人物は動いてしまいますし、自分の集中力も長く続きません。
 使用するポストカードは、洋紙・画用紙。筆記用具は、エンピツ(5〜6B)または滑らかなサインペン(0.5〜1ミリ)をお薦めします。
 描く「線」はいつも一発勝負の気持ちで引くこと。消しゴムはなるべく使わない。絵手紙に描く人物は似顔絵でなくてよいのです。自分から距離の離れている人物は、精密には描けないのですから、それよりも、その時々の人物のポーズ・しぐさ・格好の特色をとらえて素早く描くことがポイントです。

<第4話 能力は無限です>

 春四月。新入学生、新学期、新年度と「新」の言葉は、何かしら明るい希望を感じるような響きがあります。皆さん方もこの四月、何か新しいことを始めたり、新しい人との交流が始まったり楽しいことが始まるとよいですね。
 絵手紙を運んでくれる郵政事業も、この四月から『日本郵政公社』として新しいスタートをします。私も郵政OBの一人としていろいろな感慨があります。現役時代には多くの仕事をしましたが、私の生き方に大きな力を与えてくれたのは、個人能力、組織能力の開発という仕事を担当したことでした。
 絵手紙の世界や組織でも言えることは、一人の人間が自分で選んだ趣味をどれだけ充実させて生きがいに深めていくか、それは自分の能力を信じることです。現在ただ今の能力に甘んじていては、もったいないことです。
 能力には限界がないと申します。絵手紙に新しいことを取り入れて描いてみましょう。新しいことに挑戦する好奇心・意欲は必ず、あなたが気付かないでいるあなたの能力を引き出すことでしょう。

<第5話 風景の寸景を描く>

 絵手紙のモチーフは、身近なものを何でも描く、自由で手軽なもので構いません。「感じたものを描く」その心構えが大事です。家の窓から見える景色、一歩外に出たときの景色。それも心に感じれば絵手紙の絵のモチーフになります。
 ところで、最近、あるアンケートで風景の絵手紙を苦手にしている人が多くいることがわかりました。そこで、今回と次回、私なりの風景の描き方について述べてみようと思います。
 まず述べたいのは、『見える風景の全景を描こうと思わないこと』ということです。目に飛び込んでくる180度の風景を描くことは、所詮無理なことです。絵手紙に絵葉書のような上手な風景を描いても、なぜかあまり感動しません。絵手紙には「絵手紙の風景」があっても良いのではないでしょうか?
 「はがき」という小さな紙面に描く絵手紙風景は、全景でなく「寸景」がよいのではないかと思います、「誰でも描ける絵手紙」という観点から考えても「寸景」なら誰でも描けるのではないかと思います。

<第6話 風景の寸景を描く−続き−>

 見える景色を全部描こうという気持ちを捨てて、いちばん感じた箇所やものだけに焦点を絞って描きましょう。欲張らず、一つか二つのものを描き、その他は省略しましょう。
 立ったままの姿勢で描きましょう。座って描くとゆっくり描いてしまい、ついつい余計な気持ちが出て絵にまとまりが取れなくなってしまいます。立った姿勢だと線が曲がったり、震えてしまうことがありますが、それでいいのです。あなたが、いつ、どこで描いたという臨場感が出てきます。
 筆記用具はサインペンで描くとよいでしょう。サインペンは消せないから、かえって思い切りのよい線となります。彩色はポケット絵具、水筆を持参してその場で彩色するのが理想ですが、帰宅後に彩色しても構いません。厚塗りは素顔を隠してしまうので淡彩がよいでしょう。
 最後に「手紙」の条件として寸景絵手紙にも、文章は記載してください。送る相手の人を思い、語り言葉で書きましょう。

<第7話 絵手紙の彩色は自由に>

 「木下先生の絵手紙は、どんな筆記用具を使っても優しさが出ますが、彩色にも工夫があるのですか?」と質問されることがあります。そこで、今回から3回に分けて、私の彩色について、気付いたことを書きとめてみたいと思います。
 私は絵の彩色についてプロの画家に習ったことは一度もありません。むしろ絵手紙にはそれでよかったと思っています。絵手紙の絵にはプロの技法は要りませんし、逆に幼児の絵が参考になったりもします。知識がなくても一人一人異なった感性が色にも表現されることが絵手紙のよさだと思っています。
 さて、まず絵具ですが、絵手紙の彩色はどんな絵具を使っても大丈夫です。私は一般的には「顔彩」(18色〜24色)を使っていますが、子供が小学校などで使ったチューブ入りの水彩絵具の残りがあればそれでもよいのです。水彩のオーロラピンクは今でも愛用しています。外で風景を描くときは小型の「固形水彩」や「水彩色鉛筆」です。とにかく何でも使ってみることをお薦めします。次回は彩色の方法ついて述べてみようと思います。

<第8話 彩色の基本は三色>

 今回は彩色についてです。まず先入観(キュウリは緑色、レモンは黄色といったような)を捨てて本物をよく見ます。暗室でない限り、物には必ず明暗があります。私の彩色の基本は三色に塗ることです。三色とは紙の白、中間の薄い色、陰の濃い色という意味です。最低三色にに塗れば、模様やイラストではない「絵」になると思っています。また陰の先には影があります。私は影を塗るときは、黒色を使わずに本藍か紫などを使います。
 風景の彩色も、四季によって異なる自然の色をよく見て、三色を、そして影の部分も必ず彩色して遠近・明暗を出すようにします。
 絵手紙には相手への「思いやり」が大切です。暗い印象を相手に送りたくありません。「顔彩」は混色ですから、なるべく色を混ぜないようにします。混ぜるよりも乾いたら上に重ねて塗ると暗くなりません。また、明るい(薄い)色から塗るようにします。暗い(濃い)色から塗ると、明るい色の効果は出ません。

<第9話 紙の材質に合わせて彩色>

 絵手紙は「はがき」サイズの紙を使って描きますが、西洋から伝来した洋紙・画用紙と、東洋の和紙・画仙紙に大別されます。私の場合、主に「墨」を使う時は和紙・画仙紙を使い、その他の筆記用具の時は、洋紙、画用紙を使います。あまり厳格に区別しなくても構いませんが、彩色方法は区別して塗っています。
 洋紙・画用紙はどんな塗り方をしても修正ができるから構いません。ところが和紙・画仙紙は色を吸い込んでしまうから一発勝負の気持ちで、彩色筆にこれぞと思う色をつけたら、パッパッと勢いよく塗ります。塗り残しがあったり、線からはみ出していても気にしません。色には勢いがほしいと思います。
 絵手紙を楽しみながら、ていねいに彩色していれば、あなたの持っている気持(心)が必ず出てきます。最後にちょっとした心構えについて述べておきます。
 1)筆洗いの水は汚れたら、きれいな水にこまめに取り替えましょう。
 2)「白」、「こはく」を持って持っていない人がいますが、私の場合、これらの色も使うことが多々あります。
 3)今まで一回も使ったことのない色の絵具も思い切って使ってみましょう。思わぬ発見、楽しみがあります。

<最終話 年々歳々、花相似たり>

 春夏秋冬の繰り返し、四季ある国に生まれて幸せといつも感じています。春が好きですか、それとも秋が好きですかと問われることがあります。「春は春で、秋は秋でどちらも好きです」と答えます。暑い夏、そして寒い冬は、正直言って体調に好ましくない自覚がありますが、だからと言って無いほうが良いとは思いません。特に絵手紙が生活の中に入り、人生の晩年を彩るようになった昨今は、四季夫々の想いが深くなりました。
 秋が訪れ、秋の草花が咲き始めると、絵手紙に描きます。昨年そして一昨年も同じ草花をモチーフに絵手紙を描きました。そして「年々歳々、花相似たり」という言葉を思い浮かべるのです。
 ときどき「二十年近く同じような絵手紙をしてきて飽きることはありませんか」と質問されることがあります。考えてみると職業としての仕事をしていた頃は同じ仕事を三年以上した経験はありませんでした。その仕事に比べると、絵手紙の趣味は、確かに飽きることなく続いています。
 私の場合「歳々年々、人同じからず」ではないかと思っています。具体的に言えば、一年一年勉強して絵手紙に変化が出ているように心がけていますので、飽きたり退屈したりする暇がありません。
 私より年配の方が大勢いますので、断定はできませんが、絵手紙についても「見えないものが見えてくる」のが年齢ではないかと思います。「見えてくるもの」は絵手紙の技法や上手いヘタではなく、描いた人の人柄です。

地球・絵手紙絵ネット協会会報 「絵てがみの心」より抜粋(無断転載を禁じます)

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